
飯能の人たちに本場のピッツァを広めたい!純粋な想いから誕生した〈ピッツェリア ジェコ〉。

栗原開 西武線在住歴25年以上
〈ピッツェリア ジェコ〉オープンスタッフであり、ピッツァイオーロ(ピッツァ職人)。今年、3年間のイタリア修業から帰国し、同店に復帰。
建設会社がピッツェリアをオープン。風見鶏のいる黄色い丸塔は街のアイコンに。

〈ピッツェリア ジェコ(以下、ジェコ)〉はまず、その成り立ちがユニークです。飯能の建設会社の社長が、会食で茨城県つくば市にある名店〈ピッツェリア・アミーチ〉に訪れたのは、いまから8年ほど前。それまで知っていた“ピザ”とは一線を画す“ピッツァ”のあまりのおいしさに衝撃を受けたといいます。地元の人たちにもぜひ食べてほしい!そんな直球な熱意だけで、なんと〈ジェコ〉をオープンさせてしまいました。

イタリアからピッツァ窯や建築資材を取り寄せ、こだわり抜いてつくった店舗の設計は、さすが建設会社だけあってお手のもの。けれど、肝心のピッツァの専門家は当然、擁していません。いったい誰に、ここでピッツァを焼いてもらおう?
そんな時、白羽の矢が立ったのが、栗原開さんでした。当時、すでに飲食業に携わってはいましたが、ピッツァに関しては未経験。さっそく件の〈アミーチ〉で手ほどきを受けることに。

スタッフ総出でスロープやピンコロ、タイルなどを施工した思い入れの店舗が9ヶ月かけて竣工し、栗原さんのピッツァ修業も終えた2014年、満を持してオープンした〈ジェコ〉は、またたく間に話題になりました。地元の人たちに好意的に受け入れられただけでなく、遠方からも客が訪れる人気店になるまで、そう時間はかかりませんでした。
建設会社として、建物という“ハード”の部分だけでなく、そこに住まう人々の舌と心を豊かにするという“ソフト”の部分までをも担う。〈ジェコ〉は、地元に根ざし愛される企業としての取り組みの、ひとつの成功例にもなったのです。
多趣味を受け入れる懐の深さ。発信力のあるポテンシャルの高さ。

生まれも育ちも飯能の栗原さん。イタリアで修業したり、東京でシェフとして仕事をしたりと、よその土地での経験も豊かながら、地元が大好き。一度、飯能から出た友人知人も、ほとんどがこの地に戻ってきているといいます。長年慣れ親しんでいる安心感ももちろん大きいけれど、やはり、暮らしやすさは格別なのだそう。
「飯能にはいいところ、いっぱいありますよ! スーパーやホームセンターなども規模・内容ともに充実していて何も困らないし、自然が豊かなのは言うまでもありません。それに、キャンプ、音楽、サイクリング、ツーリング、釣り……。ここにいると、趣味が気軽にできるんです。しかも、仲間に声をかければすぐに人が集まるので、ピッツァイオーロである僕がライブをやったり、バーテンダーがカレーの出店をしたり、マーケットをしたり。外に発信する力と人を呼ぶポテンシャルが、飯能には多分にあると思うんですよね」
肩の力を抜いて、ナチュラルに。続けることで、地域に根づく。

オープン以来、名物のピッツァを休まず焼き続けた栗原さんは3年前、イタリア修業へ。2020年の春に帰国しました。
「僕がイタリアで学んだ最も大きなことは、肩の力を抜くということ。決して手を抜くわけではなく、いい意味で適当にやるっていうんでしょうか。以前はピッツァ一枚一枚をすべて100点満点に仕上げようとしていたんです。いまは自然体で焼いて、80点のピッツァをずっと出し続けられるほうが重要だと思うようになりました」

シェフとして他の料理もつくり、ソムリエでバーテンダーでもある栗原さんにとって、勝負どころはピッツァだけではありません。トータルで合格点を出す必要があるのです。
「たとえばソースが縁まできっちり塗ってあるとか、そういうことがいいピッツァの条件なわけではないってことに気がついたんですよね。でも、結果的には以前よりもいいピッツァを焼けるようになっています。もちろん単純に経験を重ねたぶん、技術が上達したってこともあると思いますけど」

毎週末のランチを楽しみにしているあのご夫婦や、記念日には必ず訪れるあのご家族など。常連客ひとりひとりの顔を思い浮かべながら、この週末も窯に火を入れ、飯能いちのピッツァを焼き続けます。
【今回ご紹介した〈ピッツェリア ジェコ〉について】

■店名:ピッツェリア ジェコ
■住所:埼玉県飯能市美杉台3-24-8
■電話:042-973-0606
■営業時間:ランチ11:00~15:00(LO14:30)、ディナー17:30〜22:00(LO21:00)
■定休日:水
※緊急事態宣言期間中は、土日のランチタイムのみ営業
■http://geco-pizzeria.com
※記事に掲載されている情報は取材時のもので、現状と異なる場合がございます。
(photo: Hiromi Kurokawa text: Mick Nomura/photopicnic)